 |
| 適度な照明の明かりが、ほっとした雰囲気を演出する店内 |
 |
| 辛味と味噌と野菜のシャキシャキ感がたまらない「辛味噌ネギらーめん」 |
 |
| ゴロゴロと盛られたチャーシューがまた辛味が効いて美味しい |
 |
| 「本場北海道の味をそのままお届けします」と、大坪様 |
|
「こだわらないことにこだわる」これが北地蔵店主の格言。今回お伺いした北地蔵は、下町風情が残る江戸通りから、蔵前橋通り交差点を秋葉原側へ渡ると目に飛び込んでくるハイカラな洋館の1階にあります。この街並みに溶け込むように、店内内装はもちろん味も現地の味を崩さないことをポリシーに、オープン当時から本場の味を守り抜かれています。
天然木の扉を開けると、バラード系のジャズが耳に優しく入ってきます。ペンダント型の白熱灯がカウンターをほんわか照らし、初めてのお客様や女性客も、すんなりお店の雰囲気に和んでしまう居心地のよさが感じられます。
メニューは味噌らーめんと醤油らーめんがそれぞれ4種類用意されており、中でも辛味噌ネギらーめんが好評を博しています。筆者、普段から味噌と辛子の相性には惹かれており、家で味噌汁をのむ際には、決まって七味唐辛子を振り掛けます。そんな個人的な好みも乗じ、迷う間もなく人気の品を頂きたくなりました。
早速注文すると、シャカッシャカッと、テンポよい音が香ばしい匂いをのせ厨房から聞こえ始めました。味噌ラーメンの具となる野菜が、店主の小手を利かせたフライパンの上でリズミカルに舞っています。カウンター越しに見えるのは、ツヤツヤのもやしと玉ねぎです。あっという間に炒められると、次は角切りされたチャーシューと細長く千切りされた白髪ネギが、真赤なソースとともに炒められています。ラー油でしょうか、ごま油の芳しい香りが店内に広がります。その光景を前に食欲がピークを迎え、今か今かと待ち遠しい気持ちになります。
興奮冷めやらぬなか待つこと4,5分、いよいよラーメンがカウンターに置かれました。丼の中央には、こんもり山をつくるように野菜類が盛られ、コロっとチャーシューがその上に5、6個転がっています。具材の合間からは、野菜の甘い香りと、ツンとするネギの香りが湯気にのって運ばれてきます。香りだけでもほんわか体が温まってくるようです。
では早速麺に箸を下ろします。くねくねと、箸にうまく収まらない、やんちゃな中太麺です。卵の香りがとても豊かで、色も黄みが強いように感じます。甘みと風味が豊かな麺ですが、聞けば札幌から取寄せられる本場の麺を使われているそう。東京に居ながら札幌らーめんを楽しんでもらえるよう、店主のこだわりは徹底されています。麺を掴む箸に、毎々挟まってくる、ネギの辛味とラー油の効いたネギが、甘味の強い麺とうまく口の中で調和されます。また、ネギ以外の野菜もすべて鮮度が残る炒め方をされていて、いずれもシャッキリ感がたまりません。サイドに盛られたワカメは程よく塩みが効いていて、歯ごたえがあります。またメンマも噛むと音が出るほどシャキシャキしているのですが、味はピリッと辛く、しっかりした味わいがあります。
スープは、塩分が気にならない、ダシの旨みが感じられるお味噌加減です。「うまい」っとレンゲを持つ手が後を引きます。いくらか飲んでいると、背中がじんわり汗ばんできました。辛味ソースには、トウバンジャンとラー油がたっぷり使われています。店主にスープの素を尋ねてみると、意外にも豚骨と鶏がらをベースに煮出しているとのこと。そしてスープからほのかに感じられた甘味は、ガラスープにたっぷりの野菜と、香りづけの生姜を含む香辛料を加え煮込まれているからのようです。なお、味噌ダレには、“寿味噌”と呼ばれる北海道の味噌を白、赤とブレンドしたものをベースに作られているそうです。
味のこだわりは何かと重ねて尋ねたところ、「こだわらないことにこだわり続けること」と返答を頂きました。つまり、東京各地でラーメン競争が続く中、個性を主張することで、本来の札幌の味から離れてしまうことを望んでらっしゃらないのです。「本格サッポロらーめん」と店看板に出されるのには、そのままの札幌の味を東京の人に味わってもらいたいとの願いでもあるのでしょう。
そうこうしている間に、ジャズが流れる粋な北地蔵のカウンターに、また一人、常連さんが笑顔で腰を下ろしたようです。
札幌でラーメンを食べたことのある人は、きっと一度食べたらつい次回もと、足を運んでしまうお店であるようです。
|